今や、ネットワークの重要性はこれまでとは比べものにならないほど飛躍的に高まり、それを支えるネットワーク・エンジニアの活躍の場もどんどん広がりを見せています。
この記事では、ネットワークエンジニアのキャリアプランについて考え、キャリアパスの描き方を解説していきます。
また、AWSやAzureなど、クラウド時代のネットワークエンジニアが身につけるべきスキルについても考えていきます。
もくじ
ネットワークエンジニアのキャリアパス
キャリアパスとは、自分が目指す職位や職種へ向かうための道筋です。
ネットワークエンジニアが将来のキャリアパスを考えるとき、大きく分けて、ゼネラリスト・タイプと、スペシャリスト・タイプの二つのゴールが想定されます。
ゼネラリスト(プロジェクトマネージャー、コンサルタントなど)
分野を特定しない広範囲な知識、技術、経験を持つエンジニアです。
上流工程のエンジニア、プロジェクトマネージャー(PM)、コンサルタントなどが、ゼネラリスト・エンジニアと言えます。
[ネットワーク監視、運用・保守]→[ネットワーク設計・構築]→[顧客との折衝・要件定義] というように、上流工程のエンジニアになり、管理職・リーダークラスのポジションを目指すキャリアパスです。キャリアの最初の段階では、現場で実際に作業にあたる、いわゆる下流工程のエンジニアからスタートして経験を積み、プロフェッショナルとして必要な知識や経験を身につけていきます。
その後、徐々にネットワークの設計や構築など、上流寄りの業務も担当し、やがて顧客との折衝、要件定義といった上流工程に携わるエンジニアを経て、PM・コンサルタントのようなポジションを目指すキャリアパスが一般的です。
ゼネラリストの厳しさ
上流エンジニアやPMになれば、複数の案件を管理することになります。各案件メンバーの進捗や課題の管理をし、メンバーが作成した設計書や作業手順書をチェックする立場でもあるため、高度な知識や技術はもちろん、経験値やコミュニケーション能力も必要とされます。
また、コンサルタントへの道のりは難関です。
ITコンサルタントへの転職方法を解説しているこちらの記事で紹介している通り、知識や技術を磨くだけでなく、論理的思考力やプレゼン力も必要です。
指導・助言をする相談役という立場ですから、相応の信用を得られるような能力も重要なのです。
スペシャリスト・エンジニア
特定分野において、深い知識や優れた技術を持つエンジニアです。
「このベンダー機器については、あの人に聞けば間違いない」
「この技術に関しては、あの人の右に出るものはいない」
社内で、このように言われる人に出会ったことはないでしょうか。
探求心があり、好きな分野をとことん突き詰めていける能力を持った人、と言えるかもしれません。
はじめはひとつの分野のスペシャリストを目指し、その後、似たような分野や技術も吸収していくことで、スペシャリストの守備範囲を広げ、その道を究めていくキャリアパスです。
スペシャリストは、ゼネラリストではすぐに解決が難しいときに頼られる存在でもあります。
それ故、特定分野のスペシャリストを必要としている企業もありますので、自分の得意な分野を生かせる職場に出会えると、活躍の場も広がります。
スペシャリストの厳しさ
これまでは、マネジメント経験がなく、ずっと現場で技術だけやってきたエンジニアに対してネガティブなイメージがもたれる風潮がありました。
しかし最近では、特定の技術分野を突き詰めたスペシャリスト・エンジニアとしてのキャリアも認められつつあり、「マネージャーが上で、プレーヤーは下」みたいに見られることも減ってきました。
とはいえ、SIerなどの旧態依然としたITゼネコン企業の中には、未だマネジメント経験がないエンジニアを下に見るような傾向が残っています。
特に、30代後半くらいでマネジメント経験がないエンジニアは、転職で不利になってしまうことも珍しくありません。
ですから、スペシャリストを目指すのであれば、その技術力を正当に評価してくれる会社・業界にできるだけ若いうちに移籍しておくのが賢明です。
キャリアパスの描き方
一口にネットワークエンジニアと言っても様々な立場からシステムに携わることになります。
ゼネラリスト、スペシャリスト、という2つの大きなタイプのゴール想定はあれど、その中身を見ると職種は多様です。
ここでは、キャリアパスの描き方について具体的に解説していきます。
まず、自分はどんなエンジニアになりたいのかを考えてみる
ネットワークのスペシャリストとして、ひたすらに技術を突き詰めていきたいマネジメントやコンサルタントのような、より上流工程からシステムの絵を描いていきたい
ゼネラリスト社内SEになり、社内のエンジニアを支援したい
プライベートと仕事を両立できるような職種に就きたい
目指す職種や理由は人それぞれです。自分の志向を考慮しながら大まかな方向性を定めていくといいでしょう。
次に、自分の適性も考えてみる
検証環境を構築し、テスト結果を得るのが同僚に比べて早い。実機を触るのが楽しい。→構築の要領をつかむのが上手く、スペシャリスト向きかもしれない。 社内でも顧客相手でも、衝突せずうまく対応してると褒められる。
→折衝能力が高く、PMの素質があるかもしれない。 ネットワークの他にも、Excelの関数やVBAなど、プログラミング系が得意。
→ ネットワークエンジニア目線で、業務効率化を考えたシステムを提案できるかもしれない。 新人教育や研修の講師を任されたとき、とても評判が良かった。
→ 物事を人にわかりやすく伝える能力に長けており、指導者に向いているのかもしれない。
同僚と比べて自分がスムーズに行えること、自分の得意なこと、周りから褒められることなどを考えてみると、適正が見えてきます。
キャリアアップを目指すのであれば、自分のアピールポイントを理解し、自分なりの戦い方を決めていくことが重要です。
最後に、ゴールへの道のりを明確にし、その道の険しさについても把握する
現在就業している企業に勤続することで、ゴールが見える場合
ゴールへ辿り着くために、経験すべき職位や経験年数、資格取得についても、順序立てて考えて目標を設定してみましょう。
「1年後にはプロジェクトリーダー、3年後にはプロジェクトマネージャーになる。」
「ネットワークスペシャリストの資格を1年以内に取る。」
など、自分なりの目標を年単位で設定すると、具体的なキャリアプランが組め、自分自身のモチベーション維持にも繋がります。
転職をした方がゴールに近づけそうな場合
転職エージェントに相談し、その職種の需要や待遇、給与について把握しましょう。
理想と現実の擦り合わせをすることで、自分にとってその道のりが緩やかなのか、あるいは険しいのかという展望が見え、ゴールへ辿り着くために必要なスキルもわかるようになります。
自分の希望だけでなく、企業の求めている人物像やその評価を知った上で、転職先を検討すると良いです。
ネットワークエンジニアが身につけておくべきスキル
ネットワーク・インフラの現場経験
ネットワークエンジニアのキャリアの初期段階においては、ネットワークの保守・運用フェーズを担当する人が多いと思います。
現場において、実際にネットワークを構成する機器の設定や、障害が発生した際のトラブルシューティングにあたることで、ネットワークエンジニアとして必要な知識や経験を体で覚えこむことができるでしょう。
慣れてきたら、Cisco社が認定しているCCNA,CCIE等の資格にチャレンジし、体系的な知識を身につけていくのも良いアイデアです。
Officeソフト
ExcelやWordといった、Microsoft社が販売するOfficeソフトは、当然のように業務で利用されています。
Excel
表計算を行うときの関数や、マクロを理解しておけば、業務を効率化できます。
だからと言って、議事録や設計書など、何でもかんでもexcel方眼紙で作成するのはやめましょう。
Word
報告書や作業手順書を作成する際、見出しや、罫線で描く表を工夫できれば、わかりやすい文書が作成できます。置換などの便利な機能も覚えておくと良いです。
PowerPoint
プレゼン資料を作成するのに必須です。見栄えのいい資料を短時間で作成できるよう、基本操作をマスターするのはもちろん、見やすいスライドの作り方、グラフ・図表の作成についても習熟しておきましょう。
Visio
組織図やフローチャート、構成図などを作成するときに便利なグラフィックソフトです。クラス図、E-R図などのUMLを作成するのにも役立ちます。
Access
大量のデータを扱うときに便利なデータベースソフトです。
これらソフトの基本的な使い方はもちろん、便利な機能まで使いこなせていれば、業務処理能力は格段に上がります。
英語
規格や技術文章は英語が主体となります。英語で各種のドキュメントを読解し、新しい知識・技術を習得できると、ネットワークエンジニアとして非常に高いパフォーマンスを発揮します。
AWS(Amazon Web Services), Microsoft Azureなどのクラウドの経験
AWSなどのIaaS,PaaS,SaaSの台頭により、ネットワークインフラが必要な時に、必要なだけ利用できる非常に便利な時代になりました。
また、これらのサービスにはトラフィックや負荷が増大すると、自動でサーバーやCPUなどのインフラリソースをスケールしてくれる設定が存在するため、ネットワークエンジニアが自前でネットワークを設計し直し、ハードウェアを増築するといった作業から解放されます。
煩雑なハードウェア周りの作業から自由になった分、ネットワークエンジニアはAWSやAzureを使ったプログラマブルなインフラ設計・運用のプロフェッショナルにならないと生き残れないでしょう。
筆者のキャリアパス模索体験談
最後に、筆者がネットワークエンジニアとしてのキャリアを模索していた時期の経験をご紹介します。
ネットワークエンジニアの仕事は好きだけど、自分の目指したいゴールが想定できない。
将来のキャリアパスを考えたとき、このように悩んだ時期が私にもありました。
その際に相談に乗ってくれた先輩社員から、こんな言葉を言われました。

先輩の助言を受け、PowerPointでの資料作成が好きで、ホームページ作成など、デザインをするようなクリエイティブな仕事をやってみたいと思っていたことを伝えると、

と言ってもらい、希望通りにホームページ制作をやらせてもらせることにになりました。
そこで、ホームページ作成ソフトのDreamweaverを使わせてもらい、HTMLについて少しずつ学習し始めたのですが、一週間続けても基本的な操作を使いこなせず、頭を悩ませるばかりでした。
また、ネットワークの勉強を始めた最初の一週間とは違い、未知の世界を知っていく面白さは感じられず、吸収できないのです。
試しにやってはみたけど、同じ一週間でも全然違う。「ホームページ作成って難しいなぁ。自分には向いてないかも…。」と感じました。

この一件を通じて先輩社員が教えてくれたのは、私の興味に対する現実でした。
なんとなく抱いているイメージや憧れだけで考えるのでなく、
「やっていて楽しいか?やりがいを感じるか?その給与で満足できるのか?」
という現実も考慮しなければなりません。
楽しさ、やりがい、給与など、仕事をする上では何か満足できることがないと、その道のキャリアパスも考えられません。
自分の進みたい道がしっかりと決まってる人は、下手にいろいろなことに手を出すと、無駄な遠回りや無意味な努力をしてしまう場合もあるかもしれません。
しかし、まだ明確なビジョンがない人や、進むべき方向に迷ってる人は、まずは試しにやってみる、行動してみる。そしてイメージと実際のギャップ・現実を知ることで、目指したい道を絞るというアプローチを取ってみるといいでしょう。

これは、私が先輩社員に言われて一番印象に残っている言葉です。
コンピュータを使う業界なのだから、そのコンピュータ上で行う作業が楽しいと感じられる仕事をしようと、どんなときに自分が喜びを感じるのかを考えるようになりました。
私の場合、それは知識を蓄積し、技術力を上げ、経験する案件が増えていくことで、障害対応が早く解決できるようになったり、顧客の要望に応えられる提案ができたとき。
また、サポートセンターでの対応や構築業務の際、顧客に「ありがとう。あなたに担当してもらえてよかった。」と言われたときに、喜びを感じることができていました。
そういった「どんなときに喜びを感じるか?」を元に考えていった結果、いつか要件定義や設計まで担当できるようになりたいという思いを抱きました。
けれど、顧客により近い存在でありたいので、マネジメントだけをするよりも、プレイヤーとして現場で働くことも続けていきたい。というキャリアパスを描くようになりました。
このキャリアパスを描けるようになるまで、遠回りをしたので時間も掛かりましたし、この先にゴールはあるんだろうか?という仕事も経験しました。
しかし、後から振り返ってみれば、その時に得られた経験や人脈なども貴重なもので、私にとってはどれも必要で、有意義な時間だったと今は思えています。
エンジニアとしてのゴールを考えて、自分なりのキャリアパスを描こう
いかがでしたでしょうか。優先事項、適性、志向は人それぞれです。
みんなが同じゴールではないので、キャリアパスに正解はないのです。
目指したい道を明確にし、自分が満足できるキャリアパスを描いていきましょう。