スマホを片手に気になったことをすぐ検索したり、SNSで友達の近況を知ったり。
欲しいものをボタンひとつで注文できたり、外出先でWi-Fiを利用したり。
普段何気なく、ごく当たり前に利用しているインターネットという環境ですが、それを支えるネットワークの技術がなければ成り立ちません。
この記事では、現代社会に欠かすことのできない設備となったITインフラを支える、ネットワークエンジニアの仕事内容を解説します。
もくじ
ネットワークエンジニアとは?
まずネットワークとは、コンピュータやスイッチ、ルータ、サーバーなどの機器同士が接続された環境のことをいいます。
そのネットワークの接続構成を考えたり、機器の設置や設定を行ったり、常に監視し安定的に動作するように保守・点検を行ったりする技術者のことをネットワークエンジニアといいます。
ネットワークエンジニアの仕事内容は、大きく分けて「ネットワーク設計」「ネットワーク構築」「ネットワーク運用・監視」の3つです。
以下、それぞれの仕事でネットワークエンジニアが具体的に何をするかご紹介します。
ネットワークエンジニアの仕事内容
ネットワーク設計
ネットワーク設計では、主に企業などのネットワークをつくるために必要な仕様を決め、ネットワークの接続構成や設定などを考えた設計図を作成します。
例えば、『今まで技術1課だけで業務を行っていたが、事業拡大で人員が増えるため、新たに技術2課をつくりたい』と考えている企業があったとします。
そのような時には、企業のネットワークを再設計する必要が生じます。
そこで、ネットワークエンジニアはまず顧客と打ち合わせを行い、顧客の業務内容や要望を把握し、どのような条件を満たすネットワークが必要なのかポイントをまとめます。
これを要件定義と呼び、一例として以下のような内容を顧客から聞き取ります。
社員のパソコン接続は有線ケーブルか無線環境にするか
技術1課と技術2課で、技術情報や顧客情報を共有するか否か
聞き取った内容によって、以下のように、手配すべき機器の数や回線サービス、設定すべき内容などが見えてきます。
回線の帯域を増やす必要があるか
アクセス制限をどの程度行う必要があるか
この要件定義は、顧客から依頼を受けてネットワークの設計をする際には必ず行わなければなりません。
顧客が何をしたいのか?という完成予想図がわからなければ、設計図なんてつくれないからです。
要件定義においては、顧客がなぜそのような要求をするのか?という背景事情を汲み取り、ネットワークのプロとしての視点から、適切な解決策を提案する能力が重要となります。
顧客のニーズをヒアリングし要件定義を済ませたら、具体的な仕様を決めていきます。
各種機器をどのように接続するかというレイアウトを考え、ネットワーク構成図を作成
各種機器の細かな設定を検討し、パラメータシートを作成
これらの作業を行い、最終的なネットワークの設計図を組み立てていきます。
ネットワーク構築
ネットワーク構築のフェーズでは、設計段階でネットワークエンジニアが作成した構成図やパラメータシートをもとに、実際にネットワークを組み立てていきます。
実際にクライアント企業へ導入する前に、自社内で同様のネットワーク検証環境をつくり、事前に動作テストを行うことが一般的です。
このテストでは、要件定義で決めた仕様通りにネットワークが動作しているか、充分に確認する必要があります。
機器の動作に何か問題があれば、その機器を販売している会社へ問い合わせをし、問題の解決を図ります。
自社内での動作テストに問題がなければ、以下のような手順で、いよいよ現場での構築作業に入ります。
ルーター・ハブ・スイッチなど、ネットワークを構成する機器の設置・設定
各種機器の接続
顧客環境での動作確認
ネットワーク構築は、各種機器や回線を実際につないだり、現場での点検・テストを行ったりと、物理的な作業が伴う仕事ですので、ケーブリングの技術や、ルーター・スイッチなどの設置機器に関する知識が求められます。
ネットワークの構築中は、クライアント企業に常駐し、複数の人とチームを組んで仕事を進める場合もあるため、チームメンバーと積極的にコミュニケーションをとり、まとめ役などを買って出る必要もあり、ヒューマンスキルも重要になってきます。
ネットワーク運用・監視
無事にネットワークを構築し、実際に運用が始まったら、ネットワークの維持・管理を行う必要があります。
これが、ネットワーク運用・監視です。
ネットワーク構成図が映し出された大きいモニタ画面を見ながら、ネットワークが問題なく安定して動作しているかを確認するのですが、主に以下の点に注意します。
ダウンしている機器はないか
負荷がかかりすぎていないか
監視は常に行う必要があります。基本的に24時間356日体制で仕事をするため、チームでシフト制を組むことが多いです。
例えば、インターネット回線を管理している通信キャリアのネットワークは、アクセスが集中したりしてネットワークがダウンすると、ユーザーはインターネットを始めとする各種サービスが使えなくなります。
また、銀行などの金融サービスや、航空会社の搭乗手続きなど、業務用のシステムを運用しているネットワークの場合、一瞬でもネットワークがダウンし、システムが使えなくなると、業務が止まって莫大な損害を出すことも珍しくありません。
ネットワーク運用・監視の仕事内容については、こちらの記事(未経験でもネットワークエンジニアになれる?転職する方法を解説)でも触れたように、未経験者の入り口としてチャレンジしやすい業務ではありますが、甘くみてはいけません。
ネットワークに障害が発生しないように常に監視し、万一問題が発生してもシステムそのものが止まるほど深刻化しないよう対処する。こうして絶対にネットワークをダウンさせないように努めるネットワーク運用・監視の業務は、ITネットワークを支えるとても重要な仕事です。
意外にも、身近なところで大活躍しているネットワークエンジニアの仕事例
ネットワークエンジニアと聞くと、オフィスビルの中で常にパソコンと向き合い何やら難しいことをやっていて、自分とは全く縁のない世界で生きている人、というイメージを持つ方もいるかもしれません。
けれども実は、皆さんがよく利用しているあのサービスやそのお店、ネットワークエンジニアが大いに関わっています。
ここでは、実際に私が経験した業務の一例を紹介したいと思います。
インターネット回線の安定利用を支えている
オフィスや自宅でインターネットを使いたい!という人が増えると、インターネット回線を提供している事業者側では、増設という作業が必要になります。
回線を収容している場所に新たに機器を設置し、新回線を敷設。管理センター側ではその機器や新回線が使えるよう設定を追加するのです。
収容場所で作業をするエンジニアと連絡を取り合いながら、管理センター側にいる私は、設定追加を行い、新たに設置された機器と回線の正常性を確認していました。
安定したインターネット回線を提供できるように、機器のファームウェアをアップデートしたり、古い機器を新しい機器へ替えるリプレイスという作業もありました。
これらは既に運用されている機器なので、比較的通信量の少ない時間帯に行う必要があり、深夜対応です。
プロバイダから「メンテナンスのためサービスが一時利用できなくなる可能性がある」という通知を受けたことはないでしょうか。
その時間、ネットワークエンジニアはなるべく早く復旧させるよう、努めて仕事をしています。
インターネットサービスへの新規加入時はもちろん、ネットワーク障害やメンテナンス時にも、ネットワークエンジニアの技術作業が行われているのです。
サポートセンターで対応に追われている
先のネットワーク構築の解説において、「機器の動作に何か問題があれば、その機器を販売している会社へ問い合わせをする」という説明を記載しましたが、その問い合わせ先のことをサポートセンターと呼びます。
特定のネットワーク機器について専門的な知識を持ったネットワークエンジニアが待機しており、機器の仕様や設定方法の回答、障害時のトラブルシューティングをする窓口となっています。
私もメールや電話などで問題解決の支援をしていましたが、問い合わせが止むことはなく、常に10件程の継続調査案件を抱えながら日々の新規対応に追われていました。
問い合わせてくる顧客は企業の情報システム担当者がほとんどで、業種は、IT、医療、飲食、レジャーなど多種多様。
規模は、とあるビルのワンフロア5名程度から、日本各地に支店があるというものまで幅広かったです。
大元の機器販売会社が外資系だったため、バグなどの重要問題があれば英語でメーカー問い合わせをするバイリンガルエンジニアもいましたし、
新しくリリースされるOSの動作検証をするエンジニアもいました。
機器故障の連絡が入ったときに交換を行う、保守専門のエンジニアチームもあり、24時間365日のシフト制で稼働していました。
サポートセンターで働くネットワークエンジニアは、日々顧客からの問い合わせに応え、企業の安定運用を支えています。
物流センターの作業環境を快適に
通販会社は巨大な倉庫を持っていて、あらゆる商品の受注や発送などの物流を管理しています。
注文が入ればハンディターミナルを使って商品のバーコードをスキャンし、発送処理を行う映像を見たことはないでしょうか。
ハンディターミナルは無線子機で、そのスキャン情報を受け取る無線親機という機器が存在します。
「取り扱う商品が増え、今のままでは処理能力が限界なので無線親機を増やしたい。」という顧客の要望から、無線LAN増築工事を行ったことがあります。
スキャンの処理反応が遅ければ、物流センターで働く人の作業効率を下げることになり、商品の発送遅延という影響も出ます。
ネットショッピングが当たり前になった今、こうした作業環境を快適にするネットワークエンジニアの仕事は、企業にとっても消費者にとっても、重要なものです。
飲食チェーン店の新規オープン時にも
店舗が新しくオープンするとなると、内装などの設備工事を行う他に、ネットワークエンジニアが対応する仕事も発生します。
本社サーバと業務情報を共有するためのインターネット回線を手配したり、店舗に設置するルータの設定を行ったり、構築作業を行ったりという内容です。
私が担当していたのは、回線の正常性確認、新店舗から本社サーバへのアクセスを許可する設定追加、店舗エンジニアからの情報収集などで、回線の開通統制と呼ばれる業務でした。
営業開始後は、ルータやPOSレジがダウンすることなく稼働しているか、運用・監視を行う部署もあり、ダウンを検知した場合、原因によっては機器交換を行う、保守部署もありました。
たくさんのネットワークエンジニアが知識や技術を集結させ、店舗の営業に問題が発生しないよう見守っているのです。
ネットワークエンジニアがこうした仕事を行ってることがわかると、随分身近な存在に感じられるかと思います。
日常生活の中に、ネットワークエンジニアの活躍場面は溢れているのです。
ネットワークエンジニアの魅力とは?
ネットワークエンジニアの魅力は常に新しいことに挑戦しつつ、自分の守備範囲を広めていけることではないでしょうか。
変化の激しい業界なので刺激も多いですし、知識や技術を磨くことでキャリアアップを目指せる、やりがいのある職種です。
特に最近ではクラウドが普及してきており、SaaS(Software as a Service)と呼ばれる、Web上で動くソフトウェアが主流になってきています。
SaaSと言われるとピンとこないかもしれませんが、例えばGoogleが提供しているGmailや、Google Drive、googleスプレッドシートなどのGoogle Appsのように、手元のPCにソフトウェアをインストールしなくても、インターネット経由で利用できるサービス全般のことといえばお分かりいただけるでしょうか。
利用したことのある人であれば、これらのSaaS型サービスがどれほど便利で、これから確実に伸びる分野であることがお分かりいただけるかと思います。
あらゆるソフトウェアがweb上で動作するようになると、それに伴ってネットワークの重要性がこれまで以上に大きくなり、ネットワークエンジニアの活躍の場も大きく広がります。
これからの時代のITの主流となるWebサービスの根幹を支える仕事であるという点は、ネットワークエンジニアの大きな魅力と言えるでしょう。
インターネットの世紀を支えるのがネットワークエンジニアの仕事
いかがでしたでしょうか。ネットワークエンジニアは、現代社会の発展と切っても切り離せない関係にあるインターネットの根幹を担う、非常に重要な役割であるのがお分かりいただけたかと思います。
テクノロジーを武器に、社会の発展を支えていくことに興味がある人は、是非、ネットワークエンジニアを目指してみてください。